第44章 【ヨフケノケツイ】
「……私、こんなんだから、小さい頃から人と上手につき合えなくて……」
英二くんの肩に頬をのせて寄り添うと、ポツリ、ポツリと話し始める。
ナオちゃんのこと、みんなとのこと、それから香月くんのこと……
最初は凄く楽しくて、幸せだったこと……
だんだん、歯車が狂っていってしまったこと……
気がついたときには罪を被せられていたこと……
辛くて、苦しくて、もう二度と誰にも心を開かないと決めたこと……
ゆっくりと話すと先程の夢が思い出されて、また身体が震えてくる。
ギュッと大五郎を抱きしめる手に力を込めると、じんわりと滲んだ涙がその後頭部にシミを作った。
「ゴメンな……、オレ、あん時、オレの部屋で酷いこと言って……」
そう私の話を黙って聞いていてくれた英二くんがまた謝ってくれるから、だから気にしてないですからって返事して、そしてそっと肩に寄り添う。
英二くんこそ、もう謝るの禁止ですよ?、そう言ってフフッと笑うと、彼は少し困った笑顔を見せた。
ふと英二くんが私の肩から手を離すから、不思議に思って預けていた身体の重心を戻す。
どうしたのかな……?そう視線で追うと英二くんは立ち上がり本棚の隅から私の卒業アルバムを取り出して机の上に開く。
「あ、それは……」
そう慌てる私に英二くんはチラッと視線を向けて、それからそっと微笑みかける。
それは……あの頃の笑顔の自分が辛くて自分の写真を全部塗りつぶした……
ズキンと胸が痛んで慌てて目を伏せる。
英二くん、あの写真見たらなんて言うかな……?
そうバクバクする胸で英二くんの反応を待つも、なかなかその反応が返ってこなくて、英二くんだってあんなの見たら気まずくて何も言えないよね……なんて思ってそーっと目を開く。
だけど目を開いた私が見たのは、固まって気まずそうにする英二くんじゃなくて、ティッシュに除光液を染み込ませて、塗りつぶしたマジックを拭き取る彼の姿だった。