第44章 【ヨフケノケツイ】
「ほら、小宮山は大五郎に抱っこしてもらってなって」
そう私の鼻先に英二くんは大五郎を押し付ける。
……私が抱っこしてもらうんですか?そう苦笑いして答えると、そだよん、小宮山は大五郎の妹ね、そう言って英二くんはウインクをする。
ちなみにオレは大五郎のにーちゃんだから、小宮山、自動的にオレの妹ね、なんてブイサインをして部屋を出ていった。
そうか、私が妹なのね……、そうフフッと笑いながら、今のうちに……と着替え始める。
服を着たままと違って全部脱がされると、その後の服を着るのも恥ずかしいな……
この一週間で少しは慣れるかな……?、なんて思いながらパジャマに袖を通すと、全身に走る痛さとだるさに、先程の行為の激しさを思い出して頬が熱くなった。
「小宮山ー、考えたらオレ、何がどこにあるか全然分かんないや」
冷蔵庫の中の麦茶でいい?、そう言ってグラスに入れた麦茶を手に覗き込む英二くんに、はい、ありがとうございます、そう笑顔を向ける。
「あー、小宮山、もう服着ちゃったのー?」
ずっとそのままでいれば良かったのにー、そうとんでもないことを言い出す英二くんに、嫌ですよっ!って慌てて断ると、ちぇーっ、なんて言って頬を膨らませた。
本当、英二くんはいつもとんでもないことを言うんだから……
そう呆れながら手渡された麦茶に口を付けると、汗をかいた身体に冷たいお茶が染み込んで、のどと身体を潤していく。
カランと氷が転がる透き通った音に、ふうっ……っとため息をついた。
「小宮山、寝むれそう……?」
そう心配そうに私の顔を覗き込む英二くんの言葉に、ちょっと考えこむ。
……さすがにすぐに寝れそうにないけれど、英二くんは眠いよね……
そう戸惑う私の心を見透かしたのか、寝れないならつきあうよん?なんて英二くんが私の肩に腕を回し、大五郎ごと引き寄せてくれるから、少しだけ話を聞いてもらってもいいですか……?、そう言って大五郎を抱きしめる腕に力を込めた。