第44章 【ヨフケノケツイ】
『英二、水島さんのあの言葉に何も感じなかったの?』
水島って……ああ、あの小宮山をいじめてたあいつね……、なんて思って、分かってるって、そう呟く。
一度も好きって言ってくれなかったけどね……
あの女が一瞬だけ見せた寂しい笑顔。
その言葉に肩を振るわせて反応した小宮山。
そしてオレの心にも重くのしかかった……
『結局、何も告げずに小宮山さんとの関係を続けるのは、小宮山さんを傷つけることになるんだよ?』
「だから……分かってるってば……」
ふーっとため息をついて窓の外の夜空を眺める。
この窓から小宮山はいつも空を眺めているんかな……?
昼間、あんなに怯える小宮山を見たばかりなのに、オレに壁を作る様子に腹が立って、思わず態度にあらわしてしまった。
すげー、後悔している癖に、自分の気持ちはコントロールできなくて、結局すぐにあんな顔させてしまって……
その後の、部屋に入ってこの窓辺から空を眺めた小宮山の横顔を思い出す。
それから、芽衣子ちゃんのつけたキスマークを見つけて辛い癖に必死に平気な振りをするその様子……
もう、小宮山にそんな想い、させたくないからさ……
「だからさ……小宮山だけ、だって……」
そうポツリと呟いたオレに、え?っと不二が聞き返す。
だから、もう小宮山だけだってば!、そうもう一度、はっきりと声にする。
そう、小宮山だけなんだ……
こんな風に傷つけて後悔するのも、大切にしたいって思うのも、行為の後にいつまでも腕の中で抱きしめていたいのも……
『それって、他のオトモダチとは手を切るって事……?』
「うんにゃ、もう他のセフレとはヤんない!」
そうハッキリ言い切ったオレに、不二からの返事はなかなか帰ってこなくて、なに?まだ文句あるっての?そう頬を膨らませる。
そんなオレに、いや、ちょっと驚いただけだよ、そう不二は返事をして、なんでそれで気がつかないかなぁ……?、そう言ってクスクス笑った。