第44章 【ヨフケノケツイ】
『よく恥ずかしくもなく、そんなセリフが言えるね?』
「うるさいなっ!恥ずかしいよっ!!」
不二に笑われて、改めて自分の言ったセリフに照れくさくなる。
だいたい、不二の方が恥ずかしいセリフ、よく言ってんじゃん!、そう言って頬を膨らませる。
そんなオレに不二は、そのセリフ、小宮山さんに言ってあげたの?、そう意味深に笑って言うから、あー……って言葉を濁したあと、言ってない、そう罰悪く呟いた。
「……言わないし、これからも言うつもりない……」
『どうして?僕より先に小宮山さんに言うべきじゃないの?』
だってさ、別に小宮山のこと、好きって訳じゃないしさ……、そう小宮山は寝ているのは分かっているんだけど、それでも聞こえないように小さい声でボソッと呟く。
『……あの人たちにあんなに怒ってたのに?』
「それはそうだけどさ……」
昼間、あいつ等に死ぬほど腹立ったし、オレの腕の中で震える小宮山を大切にしたいって本気で思ったし、それは今でも変わらないけれど……
だけど、自分でも小宮山に対するこの気持ちがなんなのかは、いまだにはっきりとわかんなくて……
歯切れの悪い返事をして黙り込んだオレに、それって好きだからじゃないの?、なんて不二が言うから、言うと思った、そうため息をつく。
この気持ちは好きって言うより、どっちかって言うと、かーちゃんや、ねーちゃん達に対する気持ちとおんなじって言うか……
いや、だからって、家族に欲情したりはしないんだけどさ……
以前、小宮山を大切にしようと思ったときは、このアルバムをみて同情し、そして生まれた罪悪感からだった。
今回だってそれとおんなじだって……
付け足すとしたら、共感……?
あいつ等の前で小さくなって震える小宮山が、昔のオレを見ているようで……
それから、小宮山を苛めるあいつ等が、まるでオレの前に立ちふさがるあの女のようで……
それでいて、小宮山を泣かせてばかりいるオレがあの女のように思えて、自分自身が許せなかった……