第44章 【ヨフケノケツイ】
「やっぱ不二にはちゃんと言っておこうと思ってさ……」
それでも英二の側にいたい?、そう昼間、オレの腕の中で震える小宮山にそう問いかけた不二……
小さく頷いたその返事に寂しそうな笑顔を見せて、いいんだよ、そうオレに呟いた……
オレ、小宮山と、その、また……ヤったんだけど、さ……、そう少し声のトーンを落としながら、携帯を握る手に力を込めて切りだすオレに、うん、分かっているよ?、そう不二は声色ひとつ変えずにサラッと返事をする。
「だからいいのかよー、不二、小宮山のこと、好きなんじゃないのー!?」
あまりにも不二の返事があっさりしすぎていて、意を決して話をきりだしたというに、拍子抜けしてガクリと肩を落とす。
『だから最初からいいんだって言ってるじゃない』
「それは、そうだけどさ……」
『それじゃあ、何?英二は僕が嫌だと言ったら、小宮山さんから手を引いてくれるの?』
不二が嫌だって言ったら……
小宮山から手を引く……?
「ごめん、不二……、オレ、小宮山のそばにいてやりたい……」
そう、この言葉なんだ……
インターハイの直前の、精神的にもとても大切な時の不二に、本当だったらこんな話するべきじゃないのはわかっているけれど、それでも、どうしても今日中に言わなければならなかったのは……
この言葉なんだ____
小宮山の卒業アルバムを本棚から取り出すと、パラパラと捲ってその黒塗りの写真をそっと指でなでる。
クラスの個人写真……
よくみりゃこっそり寄り添って見える生徒会執行部の香月と小宮山……
それから、あの女達と一緒に楽しそうにしている修学旅行……
きっと、この写真を撮ったときは、オレ腕の中で見せるような笑顔だったはずなんだ……
オレ、小宮山のそばにいてやりたい、そうもう一度、まるで自分の本心を確かめるように、一言一句、力を込めて言い切った。