第43章 【シルシノイミ】
「……鳴海さん……」
思わず呟いてしまい、英二くんの眉間のしわに慌てて口をおさえた。
怒られる……!私ってどうしてこうなんだろう、ギュッと目を閉じるとまた涙が溢れる。
やっと許して貰えたのに……
また直ぐに怒らせてしまって、それでもすぐに許して貰えたのに……
また嫌われたくなくて、また英二くんにウザイと思われたくなくて、必要以上に近づきすぎちゃいけないと客間にお布団敷いた方がいいのかな?って思った。
そしたらそれがいけなかったらしく、英二くんが不機嫌になっちゃって、どうしようって思って、謝らなきゃって慌てて追いかけたけど、でも部屋に入る勇気がなくて……
迷っていたら英二くんが出てきてくれて、笑顔で私を抱きしめてくれた。
でもいざ部屋に入るとどこに座ったらいいか迷って、恥ずかしさもあって離れて座ったら、膝の上に呼んでもらえて……
凄く恥ずかしかったけど嬉しくて、普段と違って英二くんの香りが私と同じ香りなのにもドキドキして、英二くんが私をいっぱい必要としてくれるのが幸せで……
だけど抱き合ったときに英二くんの肩に誰かが付けたしるしを見つけちゃって……
ズキンと心臓が痛んで、英二くんが沢山の人と関係を持っていることなんて最初からわかっていることなのに、だけど私たちはいつも服を着たままの行為だから、始めて見る英二くんの身体に付けられたしるしに動揺してしまって……
ダメ、そんなこと気にしたらまたウザイって思われる、そう気にしないように頑張ったけど涙が溢れてきてしまって……
そしてそのしるしを見た瞬間、何故か分かってしまった。
鳴海さんだ……、そう何故か確信してしまった。
ああ、これが女の感と言うものなのか、なんて動揺する心とは別のどこかで冷静に思ったりした。
しるしを確認した英二くんが頭を抱えるその様子に、思わず鳴海さんの名前を口走ってしまって、振り向いた英二くんの眉間のしわにまた恐怖で身体が縮こまった。