第43章 【シルシノイミ】
「……しるし、付いてるから……」
「へ?……しるし……?」
思いがけない小宮山の言葉に、目を丸くして聞き返してしまうと、小宮山は目を伏せながら小さく頷いた。
しるしって、当然、キスマークのことだよな……?
そんな心当たりのない状況に首を傾げながら、ちょっと明るくするよん?、そう言って部屋の明かりをつけると、辺りを見回して棚の上から鏡を手に取りそれを確認をする。
すると確かに首の付け根や鎖骨の辺りの、目立たない場所に消えかけのうっ血痕が数個付いていて、なんだよこれ!そう思わず声を上げて眉をひそめる。
……ったく、誰だよ、それぞれ事情があんだから、これは付けないのが暗黙のルールじゃん!
そう思いながら舌打ちして頭をかき乱すと、それから一つの可能性が頭をよぎり、まさかね……そうじっと考え込む。
だいたい、この消え加減って……
ちょうど計算が合う時期
暗黙のルールなんか関係ない相手
これってやっぱ、あん時の____
『一度だけでいいです……最後の思い出にしたいから……』
そう上目遣いでオレに寄り添ってきたその様子を思い出す。
『いっとくけど、芽衣子ちゃんのこと、好きになったりしないし、本当、今、ヤりたくてヤるだけだから、後で文句とか言わないでよ?』
さんざん躊躇したくせに、抑えきれずにその唇と身体にむさぼりついた。
『ああっ!先輩っ!……センパイッ!!大好きっ!あぁぁぁ!!』
芽衣子ちゃんがイったのを確認して、一時の欲望を吐き出しその身体に身を任せた。
息が整うまでの短い時間、芽衣子ちゃんの身体を抱えているその間……
たいして気にしてなかったけれど、言われてみればあん時としか思えなくて……
はぁーっと大きくため息を吐いて頭を抱え込む。
「……鳴海さん……」
ちょうど思い描いた人物の名前にハッとして振り返る。
やっぱり、そうポツリと呟いた小宮山に思わず眉をひそめると、今度は小宮山がハッとした顔をして、ごめんなさい!そう慌てて口を抑えた。