第43章 【シルシノイミ】
ふと小宮山がオレの肩に手をおいて、それからそっと顔を背ける。
その不自然な動きと、心なしか肩を押し返された気がして、小宮山?そう疑問系で名前を呼ぶと、小宮山はハッとした顔をして、それから慌てて目を伏せた。
「……どったの?」
そのオレの言葉に、慌てて首を振った小宮山は、別になにも……、そう言って無理に笑顔を作る。
そんな顔して、何もないはずないじゃん……
その小宮山の笑顔は明らかに本心から来ているものではなくて、その証拠にどんどんその目は潤んでいって、慌てて目を伏せたその瞬間、とうとうポロッとあふれ出した。
「ご、ごめんなさい……、本当に何でもないんです」
だから何でもなくて、そんな風に泣くはずないって……
さっきまでオレの腕の中で幸せに満ち足りた顔をしていた癖に、急に泣き出して、そんな風に態度が変わったのは絶対何かがあったはずで……
意味わかんねーって思って身体を起こすと、小宮山も慌てて起きあがり、怯えた顔でタオルケットに身を隠した。
「あ、あの……、違うんです、私、その……」
必死に言葉を探している小宮山にチラッと視線をむけると、目があった小宮山はビクッと震えて、それから何も言えずに言葉を飲み込んで俯いた。
だから、そんな顔をさせたくなんかないのに、なんでこーなんだよ……
はーっと深いため息をついて頭をかき乱すと、そんなオレの態度にまた小宮山が身体をビクつかせたから、ハッと我に返って、ますます怯えさせてどーすんだよって深呼吸する。
「大丈夫……怒ってないから……」
そっとその髪を撫でて引き寄せると、少しホッとした顔をした小宮山は、それからオレの肩に手をおいてまた泣きそうな顔をした。
「……小宮山、ちゃんと言って?」
「あ……、でも……」
「オレ、ちゃんと聞くから、ゆっくりでいいから……」
そっと囁いて髪をなでると、またその瞳から大粒の涙が溢れ出す。
すると小宮山は、あの……、そう口をぱくつかせて、それから俯いて目を伏せた。