第43章 【シルシノイミ】
やべー……、ほんと、考えなしで喋っちゃうの、昔から悪い癖だよな……
何度も大石に、無神経だぞ!なんて怒られたことを思い出し、はぁーっとため息をつく。
小宮山、オレのことすげー好きなんだから、あんな冗談、キツいよな……
ましてや、変わりに不二を薦めたなんて、不二に知れたらなにをされるか……
ダイニングテーブルで本を読む小宮山にチラッと視線を向けながら、不二の恐ろしいオーラを秘めた黒い笑みを思い出して、ブルッと身震いをする。
オレの無神経な一言のせいで、小宮山の空気がガラッと変わった。
必死に平気なふりをしているけれど、ただでさえ少ない口数が更に減って食欲もなくなった。
「ごめんなさい、やっぱり、夏バテみたいで……」
そう申しわけなさそうに、半分で手をつけるのをやめた食事。
あ、うん、気にしないでよ、そう返事をするオレに、明日の朝、ちゃんと食べますから……、そう言って頼りなく笑った。
オレ、小宮山の体重もとに戻そうと、エプロンまで持参して来たのに、結局、食欲不振にさせてどうすんだよ……
はぁ……、もう一度大きなため息をついて、ワシャワシャと髪をかき乱すと、ソファーにもたれかかり天井を仰いだ。
「お布団、客間に敷きますか……?」
夜もだいぶ更けた頃、そう気まずそうに声を掛けてくる小宮山に、へ?って思って、なんでさ?って返事をする。
「なんでって……」
「布団なんか小宮山のベッドでいいじゃん?なに、小宮山、オレと一緒にねんの、やなの?」
そう頬を膨らませるオレに、あ、いえ、そういう訳じゃ、そう小宮山は慌てて首を横に振って、それから、でも、英二くんに迷惑かなって……、なんて言って、気まずそうに目を伏せた。
……迷惑ってなんだよ?
最初は小宮山の部屋に荷物を置かせてくれた癖に、今更客間にって、やっぱ夕飯の時から小宮山に壁を作られた気がして、作られたって言うより、今までのオレが作らせたのはわかってんだけど、なんか胸の辺りがモヤモヤした。