第43章 【シルシノイミ】
「あのさ、今のはその……」
「大丈夫ですよ、冗談だってわかってますし、私、勘違いなんかしませんから……」
もちろん不二くんに頼んだりもしませんよ……、そう言って平気な振りをする私に、英二くんはホッとした顔をする。
うん、大丈夫、勘違いなんてしないから……
英二くんが助けてくれたって、優しく抱きしめてくれたって、それはいつもの気まぐれなんだから……
『小宮山は黙って、オレに呼び出されんの待ってればいいんだよ……』
屋上で英二くんに言われたその言葉を思い出してズキンと胸を痛ませる。
思い出すのも辛いくせに何度も繰り返して思い出しては、その度に自分の立場を思い知らされる……
だめ、顔にも態度にもだしちゃだめ……
慌ててその言葉を頭から追い出してまた笑顔を作る。
いつまた英二くんの気が変わるか分からないんだから……
今度こそ英二くんに嫌われないようにしないといけないんだから……
私は英二くんの優秀なセフレ、必要以上に近づいちゃダメ、そう笑顔の奥で何度も繰り返した。