第43章 【シルシノイミ】
「じゃあさ、付け合わせの粉ふきいも、塩ふって仕上げてよ?」
「……お塩ってこれくらいですか……?」
「小宮山……その山盛りのスプーン、塩じゃなくて砂糖だから……」
結局、私がしたことはレタスをちぎっただけだったけど、英二くんと一緒にキッチンに立ってお料理をして、馬鹿にされても楽しくて……
「高校は家庭科選択制だからいいけどさ、中学ん時はどうしてたのさ?」
「調理実習は洗い物を担当して誤魔化しましたし、裁縫は先生が努力を評価してくれました」
結婚したら苦労するよん?、なんて英二くんが意地悪く笑うから、いいんです、私はお料理上手な家庭的な人か、私の作る独創的な味付けでも、美味しいって食べてくれる心優しい人と結婚しますから、そう言って頬を膨らませた。
「はは、オレなんかどうー?料理得意だよん?」
そう英二くんがサラッと笑顔で爆弾発言をしてくるから、ドキンと大きく心臓が跳ねて、かあーっと自分でも分かるくらい、一気に顔が熱くなる。
バカ!こんなの、その場のノリで言っている軽い冗談じゃない……!
そう思うんだけど、分かってはいるんだけど……
ドキドキして心臓が破裂してしまいそうで、思わず何も言えずに俯いてしまうと、そんな私の様子に気がついた英二くんが、あって顔をして、それから、あー……って口ごもる。
「……不二、なんか、オススメだよん……?酸っぱいもの以外なら、なんでも美味しいって食べるから、さ……」
そう目を伏せて言う英二くんの言葉に、いいですね……、そう顔を上げて笑顔を作る。
不二くんなら、絶対、大切にしてくれますし、今度、頼んでみます、なんて言ってオムレツをひとくち、口に運ぶ。
そりゃ、英二くんにとっては私に勘違いされたら面倒だもんね……
でもだからって、そんな気まずそうに他の人を薦めてこなくてもいいじゃない……
英二くんの気まずそうな顔に胸が痛んで、ギュッとスプーンを強く握りしめた。