第43章 【シルシノイミ】
「えっと……、お夕飯、作ってくれているんですか……?」
「そだよん~、小宮山、料理苦手そうだしねー?」
前に得意か聞いたとき、はぐらかしたじゃん?、そう言ってウインクする英二くんに、そうですけど……なんて言って頬を赤くする。
それから英二くんは、あ、でも卵くらい割れんだろ?なんて言って私にほいっと卵を差し出すから、えーっとー……、そうひきつった笑顔でそれを受け取る。
まさか……ねえ?、そう苦笑いする英二くんに、か、カルシウム入りで良ければ……そう言って目をそらした。
「ほーんと、小宮山、家庭科苦手だねー」
普段、母が座る席に座る英二くんがそう苦笑いをするから、放っといてください、なんて言って頬を膨らませると、英二くんが作ってくれたオムレツをパクッと口に頬張る。
「……美味しい……」
「そうだろー?」
なにこれ、本当にふわふわで、口に入れた途端トロッと溶けて消えちゃうみたい!
お母さんのオムレツも美味しいけれど、英二くんのオムレツも負けないくらい美味しい……!
得意げな顔で満足そうに笑う英二くんをじっと眺めながらその味を堪能して、それから卵も満足に割れない自分を情けなく思う。
ボウルに卵を割ろうとコツンとヒビを入れた途端、グシャっと潰れてボウルの中は殻だらけ。
だからカルシウム入りだって言ったんです……!、そう赤い顔をする私に、うん、うん、そだね、そう言って英二くんは苦笑いをして、コンコンッと片手でいとも簡単に卵を割った。
手際よくオムレツを作るその様子に関心していると、ほらほら、小宮山はサラダ担当ー、なんて言われて……
レタスをちぎったまでは良かったけれど、トマトを包丁で切ろうとしたところで、あー、小宮山に包丁はまだ早いかもね、なんて苦笑いで止められた。