第43章 【シルシノイミ】
……まだドキドキしてる……
シャワーで汗を流しながら、英二くんの始めてみた素顔と濡れた髪の毛を思い出し、はぁ……っとため息をつく。
そうだよね……
考えてみたら、一週間も泊まってもらうんだもん、色々な「初めて」を見れるんだ……
そう思うとますますドキドキして、心が落ち着かなくて、慌ててギュッと身体を抱きしめた。
ちょっと待って……!
見れるって事は、逆に見られるってことじゃない!
やだ、英二くん、入ってこないよね……!?
あー、トイレとか、どうしよう……!
そう内心頭を抱えながらシャワーを浴びると、ふと鏡に映る自分の首や胸元に、赤く散らばるうっ血痕を確認してそっと指で撫でる。
また英二くんにつけて貰えたそのしるしに、今度は幸せで胸がいっぱいになり涙が滲む。
良かった……本当に、良かった……
着替えてスキンケアを済ますと髪を乾かす。
それから手洗いをして脱水をかけていたクッションを洗濯機から取り出して、他の洗濯物は明日でいいかな……?なんて考える。
そう言えばお夕飯……どうしようかな……?
今日、明日くらいならお母さんが作ってくれたもので間に合うだろうけど……
一泊だけなら何とかなったけど、私の独創的な料理を英二くんに出すわけにもいかないし……、なんて思いながら洗面所のドアを開けると、家中に漂ういい香りに目を丸くする。
なに?この美味しそうな匂い……?
鼻をクンクンさせながらキッチンのドアを開けると、そこにいたのは三角巾にエプロン姿でフライパンとお皿を手に振り返る英二くん。
「あ、待ってたよーん♪」
勝手に冷蔵庫の中のもの、使っちゃったよん?、そう言いながら、器用にフライパンを振ってポンと中身を空中に放り投げると、くるんと回ってお皿の上に受け止める。
ほい、ふわふわオムレツ、いっちょ上がり~♪、そう私の目の前に差し出し、ニイッと得意気に笑うその笑顔に、目を丸くしてポカーンと口を開けた。