第42章 【イエジ】
「違うんです……、本当に、一緒に寝て欲しいんです、夜……」
怖い夢、みるから……、そう英二くんのシャツをまだ小刻みに震え続ける手でギュッと握りしめる。
中学に行けなくなったあの頃、毎日のようにナオちゃんの事を思い出して怖い夢を見た。
毎晩、泣き叫びながら目を覚ます私を、お母さんが優しく抱きしめてくれた。
よりによって今はお母さんがいなくて、ネコ丸はいるけれど、でもあの家にいるのは私一人きりで……
これから英二くんがうちにきてくれるって言ったって、帰った後は一人で乗り切らなきゃいけなくて……
そんなの、怖すぎて、私、耐えられそうにないもの……
とりあえず今晩さえ乗り切れば、多分あとは何とかなるから……、そう思って恐る恐るお願いしたんだけれど、なかなか英二くんからの返事が帰ってこなくて、やっぱり迷惑だったかな……?そう心配になってそっとその顔を見上げた。
「小宮山のかーちゃんってさ……、もしかしてイギリス、行った……?」
恐る恐る見上げた英二くんは、んー……って考えた顔をしていて、それからそう首を傾げて聞いてくるから、え?って思って、あ、はい、なんて返事をすると、やっぱりね、そう言ってニイッと笑う。
「んじゃ、急ぐよん、小宮山んちに行く前に寄るところ出来たから!」
え……?寄るところ……?そう不思議に思う私に、オレんち、色々、持ってかなきゃじゃん?、そう言って英二くんはウインクをする。
「どんくらい行ってんの?イギリス」
「一週間ですけど……」
んー……大石んち……じゃ、さすがに長すぎるかなー?、そうブツブツ考えながら、私の手を取って歩き出す英二くんについて行きながら、思いがけないその言葉の意味を必死に考える。
まさか……英二くん……ずっと一緒にいてくれるの……?
そう半信半疑に思いながら、握られた手に力を込めると、英二くんは私の方を振り向いて笑った。