第42章 【イエジ】
「これから行ってもいい?」
その英二くんの問いかけに、恥ずかしくて顔を見ることが出来ず、その胸に頬を寄せてただ小さく頷いて返事をする。
そんな私に英二くんはまたキスをして、それから、小宮山、顔、真っ赤♪、そう面白そうに笑った。
そんなこと言ったって……、そう思いながらその熱い頬を英二くんの胸に寄せて隠すと、短い通知音と同時に胸のポケットでヴーっと携帯のバイブがなる。
LINE、多分、大石達、そう言って英二くんが私の肩から手を離してそれを確認し始める。
大石くんってあの英二くんとペアだった人だよね……?なんて思いながら、一歩引いて英二くんの携帯が終わるのを待っていると、途端にさっきのナオちゃんたちとの事が思い出されて、胸のあたりがザワザワと騒ぎ出す。
ギュッと身体を抱きしめて大きく息を吸い、大丈夫……大丈夫……そう何度も心の中で繰り返した。
「小宮山?」
ハッとして顔を上げると、英二くんが私の顔をのぞき込んでいて、慌てて笑顔を作ると、終わったんですか?そう言ってなんでもない顔をする。
ん、って軽く頷いた英二くんが、行く?って聞くから、あ、はい、そう慌てて返事をして床に落ちていたバッグを拾い上げると、その手を英二くんはそっと掴んだ。
ドキッとして顔を上げると、英二くんが心配そうな顔でのぞき込んでいて、小宮山、まだ怖い……?、そう私をもう一度引き寄せた。
ごめんなさい……、そう呟いて英二くんの胸にそっと頬を寄せると、すごく安心できてまた涙が溢れる。
だから謝んなって、そう苦笑いする英二くんに、あ、はい、ごめんなさい……、そう思わずまた謝ってしまい、そんな私に、ほら、またー、そう呆れた声を上げて英二くんはピンッとデコピンをした。
「もう、小宮山はごめんなさい禁止ー!」
そう言って私の顔を指差してニイッと笑う英二くんに、少しヒリヒリするおでこをさすりながら、努力します、そう言って笑顔を返した。