第42章 【イエジ】
「別にこんくらいで泣くことないじゃん……?」
そう英二くんが優しく囁いてくれるんだけど、だからこそ次から次と涙が溢れてきて、その度に英二くんはその涙を拭い続けてくれるから、早く泣きやまなきゃって思えば思うほど全然止まらなくて……
ごめんなさい……そっと呟くと、だから謝んなって……そう英二くんはまた優しく抱きしめてくれた。
「小宮山、何も悪くないんだからさ……」
でも……そう顔を上げると、すぐ側に英二くんの顔があって、あっ……って思ったその瞬間、ゆっくりと英二くんと唇が重なりあった。
英二くん……
あの日、英二くんが倒れた日のお昼休み、痛いの痛いの飛んでいけをした、あの後のキス以来のその幸せに、また涙が溢れて英二くんを抱きしめる腕に力を込める。
すぐに離された唇がまた重なって、二度、三度とそれを繰り返すと、ふと英二くんの動きが止まり、それから私を抱きしめる腕の力を緩める。
英二くん……?、そう不思議に思って顔を上げると、英二くんは気まずそうな顔をしていて、これ以上続けると止まんなくなるからさ……、そう言って苦笑いした。
「ほーんと、オレの頭ん中、コレばっかでゴメンにゃ……?」
そう私の肩に頭をもたれかける英二くんが私の顔をのぞき込んで言うから、恥ずかしくて何も言えず首を横に振ると、キュッと身体の方にも熱が帯びる。
英二くんだけじゃないよ……、そんな恥ずかしくてとても口に出来ない思いを、そっと心の中に隠すと、英二くんの背中に回した手にギュッと力を込めた。
「……小宮山んちさ、今日、かーちゃん、いる?」
そう頬を指でかきながら問いかける英二くんに、ふるふると首を横に振って答えると、これから行ってもいい?、そう言って英二くんは照れくさそうに笑った。