第42章 【イエジ】
「オレ、すげー酷いことばっか言ったじゃん……?散々無視したし、いっぱい嫌な顔したし……」
「そんなこと気にしてないですよ……?」
英二くんから浴びせられた言葉にも態度にも、確かにいっぱい涙を流したけれど、それでも英二くんは助けてくれたから……
香月くんには届かなかった私の助けを求める声が、英二くんにはちゃんと届いて助けにきてくれたから……
もちろん声に出した訳じゃないから、ただの偶然なんだけど、だからこそ凄く嬉しくて、それから英二くんが謝ってくれて、後悔している様子を見せてくれただけで、もう本当に幸せで……
助けてくれて、本当にありがとうございました……、そうお礼を言って抱きしめる手に力を込めると、英二くんは少し困ったような笑顔を見せた。
「もっと責めりゃいいじゃん……」
そうポツリと呟く彼に不思議に思って首を傾げると、オレのことも、あいつ等のこともさ……、そう英二くんが目を伏せるから、またその胸に頬を寄せてゆっくりと首を横に振る。
「本当にいいんです、英二くんが助けてくれて怒ってくれたから……」
本当に十分なんです……、そう言ってそっと微笑むと、そんな私の髪を英二くんは優しく撫でてくれた。
「赤くなってる……」
ふと英二くんの手が移動して、そう頬を優しく撫でてくれるから、少しくすぐったくて首をすくめる。
痛かった?、なんて心配そうに掛けられた声に、また黙って首を横に振る。
ナオちゃんに撫でれたときの恐怖とは違って、その優しく触れてくれる手はとても安心できるもので……
身体の方は相変わらず震え続けていたけれど、心の方は本当に安心できて……
自然と笑顔になると、そっとその叩かれた頬に英二くんが優しくキスしてくれた。
頬に触れた懐かしい英二くんのキスに涙があふれると、今度はその瞼にキスをしてくれて、それから英二くんは次の涙を指で拭いてくれた。