第41章 【エガオノオク】
「それしにても、あの英二先輩がとうとう彼女持ちっすかー!」
流れる涙が落ち着いた頃、そう喜々とした顔で桃が声を弾ませたから、いや、彼女ではない、そう冷静な口調で乾がそれを否定をする。
「へ……!?、それじゃあ……小宮山先輩って、まさか……英二先輩のセフレっすか!?」
乾のその言葉に桃が勢いではっきりと言ってしまい、そのセフレというあまりよい意味ではない言葉に、周りの視線がチラチラとこちらに集まる。
うるせぇ!周りをよく見てみろ!、そう居心地の悪さを感じて海堂が一喝し、あ、悪ぃ……、そう周りの視線に気がついた桃が気まずそうな顔をした。
「だいたい、そのことに気がついてなかったのはテメェだけだ」
そうボソッと呟いた海堂に、マジかよ?そう驚いた顔をした桃が僕と乾に視線を向けてくるから、多分ね、そう微笑んでそれに答えると、マジっすかー!なんて叫びながら桃は手の平で顔を覆い天を仰いだ。
「海堂ー、お前、何時の間に気がついたんだよ!?」
「体育祭の時だ」
「かーっ!、だったらなんで教えてくれなかったんだよー!」
「小宮山先輩の様子を見ていれば馬鹿でも気がつく」
「何だと!じゃあ、気がつかなかった俺は何だって言うんだよ!?」
「……馬鹿以下なんだろ?」
雲行きが怪しくなってきたな……そう思っていると、案の定、何だと!?、やんのかテメェ!、そんないつもの掴み合いが始まってしまい、見かねたキャビンアテンダントさんに、すみません、他のお客様のご迷惑になりますので……なんてなだめられる。
本当、桃と海堂は相変わらずだな……そう苦笑いをしながら、ペコペコ頭を下げる2人にため息を付いた。