第41章 【エガオノオク】
そう、小宮山さんの立場を思えば否定なんか出来なかった。
好奇の目は僕より彼女に向かうのは分かりきっていたから……
実際、小宮山さんに向けられたのは好奇の目だけではなく、強い嫉妬心からくる妬みの対象にもなってしまった。
もともと顔を隠さず学園生活を送るようになってからは、その対象になっているのには気が付いていて、何とかしたいと思っていたけれど、それが僕のせいで尚更酷くなるなんて許せなかった。
彼女への嫌がらせはすぐに納めることが出来たけど、その事で僕との噂はより信憑性を増してしまった。
学校では噂通り2人でいることも自然になっていて、電話やメールもよくするようになったけれど、それでも決して小宮山さんの気持ちが僕に向くことはなかった。
幾度となく思わず口をついた彼女への想いも、自分へ向けられたものとは微塵も考えない小宮山さんのその様子に、全く意識されていないんだと思い知らされたし、英二のためならそれでいいと思っていた。
そう、それでいい____
小宮山さんは僕の大切な親友を救う大切な存在だから……
そして小宮山さんが望んでいるのも英二だけだから……
ただ、小宮山さんが英二を想うことに辛くなったとき、僕が少しでもその辛さを軽くして、その傷ついた心を癒やしてあげれたら……それでいいんだ。
小宮山さんのことで怒りを露わにした英二の様子を思い出す。
大石につかみかかり、香月くんと水島さんたちに怒りを露わにし、真っ先に小宮山さんのピンチを察して走り出した英二。
僕が頭で考えて行動しようと思ったその時には、既に英二が小宮山さんの為に動いた後だった。
英二は考えるより先に身体が動いていたんだ……
小宮山さんのことに関し、英二は常に僕の先を行く……
やっぱり悔しいな____
ただ眺めて見ているしかなかった、英二の背中を思い出し、自然と溢れてくる涙を頬杖に隠してこっそりと拭った。