第41章 【エガオノオク】
その日のお昼休み、初めて聞いた英二の本心は、友人として耳をふさぎたくなるような事実と、予想以上に小宮山さんを思いやる内容だった。
今まで何度かオトモダチと一緒にいる英二を見たことがあったけど、女の人のことを思いやり、気遣う様子を見たことなんかなかったから、小宮山さんは英二にとって、特別な存在になる人だと直感した。
……英二本人は全く無自覚で、罪悪感と同情だって言っていたけど。
罪悪感の意味は英二の告白で納得できたけど、同情の意味はよく分からなかった。
でも今思うと、英二は小宮山さんの心の傷に気がついていて、それで自分と近いものを感じとっていたのかもしれない。
それからは英二を救ってくれる存在として、小宮山さんと少しずつ話をするようになった。
なかなか僕には心を開いてくれなかった小宮山さんだけど、時折、英二のことを思って見せる笑顔やその涙に、心の強さと儚さを併せ持つ女性だな……そう感じた。
それから英二のためなら、普段からは想像できないほどの行動力をみせる彼女に、尊敬と敬意を払うようになった。
そしていつの頃からか、そんな彼女に心惹かれて行く自分に気がついた。
だけど小宮山さんは英二を救ってくれる大切な友人だったし、第一、彼女はいつだって英二しか見ていなくて、だから友人以上の関係を望もうとは思わなかった。
英二自身も無自覚なだけで、僕から見たら、十分小宮山さんを意識しているように思えた。
だけど、英二の心の闇は僕が想像できないほど深く暗いもので、自分の気持ちに気がつくことを無意識に拒否しているようにも思えた。
そしてあの日、体育館裏で英二が発作を起こして倒れた日……
英二が小宮山さんに大五郎を触らせるかを確かめたくて、また、もし触らせたら英二が自分の気持ちに気付くきっかけになるんじゃないかと思って、嫌がる小宮山さんを強引に英二の家に連れて行った。
だけど、そのことで英二の心を乱すきっかけになってしまい、それから今日までの長い期間、2人を引き離すきっかけになってしまった。