第41章 【エガオノオク】
小宮山さんが教室を出た後、ピューッと言う英二の口笛の音で我に返った。
ハッとして英二を見ると、英二は小宮山さんの背中を眺めながらニヤリと笑っていた。
「な、言ったじゃん?小宮山、ビッチなんだって!」
「……英二がやらせたんじゃないの?」
「んな訳ないじゃん!あの小宮山だよ?」
ビッチでもなきゃオレなんかとヤんねーって!そう言って無邪気に笑う英二の言葉に、確かにそうだな……って思うんだけど、でもやっぱり信じられなくて……
「まだ疑ってんのー?だったら本当にヤらせてもらいなって、あいつ、ソッコーで脚ひらくからさ」
そう言って手をヒラヒラさせて教室を出て行った英二の背中を眺めながら、そっと小宮山さんの感触が残る唇に触れた。
それから2人を気にかけるようになった。
英二の言うとおり、小宮山さんも同じ価値観の元で楽しんでいるのなら別に構わないけれど、もし英二が無理強いしているのなら、さすがに見て見ぬ振りは出来なかったから。
気にかければ気にかけるほど、どうしても小宮山さんがビッチだなんて思えなかった。
でも直接小宮山さん本人に確かめても、あの教室での様子を思うと、絶対本当のことを言ってくれないだろうから、少し強引だけど試させてもらおうと思った。
ある日、珍しく早く登校した英二が屋上に向かったのを確認し、絶好のチャンスだと小宮山さんを呼び出して、英二のいる屋上に連れて行くと強引に迫る振りをした。
小宮山さんは恐怖に震えながら何とか逃れる術を探していて、その様子にやっぱり英二の出任せなんだなって確信した。
僕に試されたと理解した小宮山さんは、ホッとした顔をしたのもつかの間、急に青い顔をして僕を誘惑してきた。
震えながら慣れない手つきで必死に僕を誘惑するその様子に、力では簡単に引き離せるはずなのになかなか出来なくて、カウンター攻撃を得意とする僕が、逆にカウンターを受けた気分だった。
英二が僕たちの様子を伺っていることを知らなかったら、本気で自分をおさえられなかったかもしれない……
情けないな……、2人を残して屋上を後にすると、彼女の感触を思い出してため息をついた。