第40章 【ウデノナカノヌクモリ】
『一度も好きっていってくれなかったけどね……』
その女の言葉に香月だけでなく、オレと、オレの腕の中で震える小宮山も、ピクッと身体を振るわせて、それからグッと唇を噛む。
香月がこの女をどんな思いで抱いていたかなんてしんないけどさ、一度も好きだと言わず、何度も身体を重ねてんのは、オレたちだって同じだな……
その言葉はオレの心に重く……凄く重くのしかかった。
「……悪かったわね、もう遊んであげないから安心していいわよ?」
そう女はさっきまでの高圧的な態度とは違って、静かな声で小宮山に謝罪した。
その謝罪とは言えない言い方に、何だよ、その言い方っ!そう思わず声をあげると、英二くん、いいんです、そう小宮山は小さい声でオレを見上げる。
「だけどさっ……!」
「いいんです……本当に、もういいんです……」
そう何度も「いいんです」を繰り返した小宮山は、黙ってオレの胸の中に顔を埋めると、小さく何度か首を横に振りただ静かに嗚咽を漏らす。
そうだよな……もうこれ以上、小宮山とコイツ等を関わらすわけにいかないよな……、そう思ってそっとその髪を静かに撫でた。
「もういいから、おまえ等、どっか消えろよ」
「言われなくても消えるわよ……」
女たちがコソコソとその通路から立ち去る中、そう低い声で吐き捨てるように言った中心の女だけは、最後まで堂々とした態度で口元に笑みを浮かべていた。