第40章 【ウデノナカノヌクモリ】
「小宮山さん……」
その女達が出て行くと、そっと近づいてきた香月が、もう一度小宮山に声をかける。
チラッと視線だけ向けた小宮山に、香月がもう一度謝ると、もう本当にいいから、そう小宮山は静かに返事をした。
「キミの無実は必ず僕からみんなに伝えるよ……」
「……そんなこと、やめて……もう、関わりたくないの……」
思い出したくもない……そう小宮山は小さく呟いて、それからまたオレの胸に顔を埋めると、そのその細く頼りない肩を振るわせて涙を流した。
またその髪を撫でて、小宮山、そう声をかけると、そっと顔を上げた小宮山は、また頼りない笑顔を見せる。
英二くん……そうオレの名前を呼んで幸せそうに笑ったから、その笑顔を見ていたら、自然とオレも頬がゆるんだ。
「英二くん、だったね……」
そんなオレらに、少し申しわけなさそうに香月が声をかける。
あー……?って思って、……何だよって返事をすると、香月は寂しそうな笑顔でオレに手を差し出した。
「小宮山さんのこと、よろしく頼むよ。キミになら安心して任せられそうだ……」
「……なんで、おまえにんなこと言われないといけねーんだよ……?」
そう差し出された手を無視して睨みつけると、そうだな……僕にはそんな事を言う資格ないな……そう言って香月はその手をそっと引っ込める。
「小宮山さん……それじゃ……元気で……」
「……香月くんも……」
そう言って、香月に小さく笑顔をむけた小宮山を抱きしめる手に力がこめる。
オレだって小宮山を託される資格なんかねーよ……そう思いながらそっと目を伏せる。
香月が通路のドアを開けて出て行ったのを確認した小宮山が、またオレの胸に頬を寄せたから、力いっぱいその細い身体を抱きしめた。