第40章 【ウデノナカノヌクモリ】
「大丈夫だって、不二と乾がいるから」
そうオレの言葉に、え?そう小宮山は顔を上げる。
この状況の釈明くらい不二と乾に任せておけば多分大丈夫だけど、でも、このままじゃ……
そう不安げに見つめる小宮山を見ながら、また胸を痛ませる。
バタンと音を立ててあの女が飛び出していった先のドアが開き、みんなの視線が一斉にそちらへとむかう。
「あの人達が……あの人達が、私達をここに……」
そう黒幕の女は涙を流しながら名演技で戻ってきて、その様子を怯えながら見た小宮山の目が大きく見開かれた。
「璃音が……璃音があの人達を連れてきたの……そして私達を襲うようにって……」
久しぶりに会えて嬉しかったのに……凄く嬉しかったのに……そう涙を流す女の肩を抱いているのは、さっき不二が外に待たせていた香月で、その顔をみた小宮山は身体を固まらせていた。
やっぱり、顔を合わすことになっちゃったじゃん……
そう固まりながら香月を見ている小宮山を見ながらため息をつく。
せっかく不二が気を利かせて、小宮山と鉢合わせしないよう、香月にはこの通路に入ってこないように言っていたのに……
因みに外で待っているのは大石も同じで、それはオレ達と仲間だと分かれば、小宮山が青学に通っているのが安易に想像出来てしまうから。
「……久しぶりだね、小宮山さん」
そうオレ達の前まで歩み寄ってきた香月は、懐かしそうな顔をして、髪、伸びたね……そう小宮山の髪をなでようと手を伸ばす。
その瞬間、小宮山の身体がビクッと跳ねて、慌ててオレの胸に顔を埋める。
それから、ギュッと背中に回した腕を、もう一度握りしめてガクガク震えだす。
「……触んなよ、小宮山、嫌がってんじゃん」
香月から庇うように小宮山を抱きしめ、その顔を睨みつけながらそう言うと、……そうだな、そう香月は伸ばした手を少し名残惜しそうに引っ込めた。