第39章 【セフレトモトカレ】
「小宮山が否定しなかった!?出来るはずないじゃん!あいつ、とっさに言葉なんか出てこないやつじゃん!そんで自分の中に言いたいこと全部抱え込むやつじゃん!彼氏ならなんでわかんないんだよ!?」
小宮山はいつだってそうだった。
必死に何か言おうとしても、いつも上手く言葉が出てこなくて、出てきたとしても言葉足らずだったり、誤解されるような言い方しか出来なくて、結局いつも言葉を飲み込んでばかりで……
オレに対しても、いつも何も言わず必死に我慢していて……
「親友が言った!?だったらそいつが嘘ついてんに決まってんじゃん!お前、自分の彼女よりその親友の言葉を信じたって言うのかよ!?」
まさかお前、小宮山からその親友ってやつに乗り換えたとか言うなよな?そのオレの言葉に、香月はピクッと頬をひきつらせて、それからますます気まずそうな顔をした。
本当、最悪だな……
小宮山がその時、どんな思いをしたか想像すると胸がズキンと痛んだ。
そして終業式の日にオレが目の前で芽衣子ちゃんの手を取った時とすっかり重なるその状況に、あの時の小宮山の泣きそうな顔が胸の痛みをさらに大きくさせた。
本当に最悪なのはオレじゃんか……
香月のこと、オレが責める資格なんかこれっぽっちもねーよ……
そう自分がやったことに後悔して、また唇を噛みながら、ふるえる拳を必死に握りしめる。
それからはっとして顔を上げる。
小宮山、今、その親友と一緒って言ってたじゃん!そう思ってさっき見た小宮山の様子を思いだす。
小宮山のどこかオドオドした態度は、オレに対して見せるそれと同じで、最近、そんなところばっかみてたから、なんか当たり前に思っちゃって、なんでオレ、すぐに気がつかなかったんだよって自分に舌打ちをする。
顔を上げて小宮山がいたほうを振り返る。
だけど、もうそこに小宮山の姿はなくて、慌ててその方に向かって走り出した。