第38章 【サイカイノトキ】
「突然消えるんだもん、本当に心配したんだよー?」
今、どこにすんでるの?そうクスクス笑うその歪んだ笑顔に、目の前が真っ暗になる。
真っ暗な中、目元と口元だけが白く光って見えるその光景に、方向感覚すら分からなくなる。
みんなのクスクスという笑い声が聞こえてくるんだけど、それがどちらから聞こえてくるのかわからずに、必死に耳をふさいでそれを拒む。
怖い……怖い……怖い……!!
恐怖で動かない身体と心をなんとか立て直して、慌ててくるりと向きを変えると出口まで走り出す。
だけど一瞬のうちに周りをグルッと囲まれて、逃げ道をふさがれてしまう。
「どこ行くの……?久しぶりに会えたって言うのに」
両腕をしっかりと組まれて、抱えられるようにおさえられて俯く私の顎を、人差し指でクイッと上げながらナオちゃんはニヤリと笑う。
感動の再会、だね、そう言って私を蔑むその目に震えながら、誰か、助けて?そう必死に周りに視線を送るんだけど、がっちり囲まれてしまっては、ただの女子高生グループが楽しそうにしているようにしか見えてなくて、誰も私の危機なんて感じ取ってくれそうもなくて……
「やだ、そんな顔しないでよ、まるで私達が虐めてるみたいじゃない」
ほら、前みたいにちゃんと笑おうよ?そう言って笑うナオちゃんだけど、当然笑えるはずなんかなくて目を伏せる。
ここじゃ目立つわね、場所、移動しようか?そうみんなで話し合う彼女達の声を聞きながら、これから何が起こるのか、考えたくもないことを考えて身体が震えてくる。
「あ、でも、もうすぐ香月くん来ちゃうね……?」
どうしようか?そう話すその名前に思わず顔を上げて目を見開く。
香月くん……?香月くんもここにくるの……?
一気にあの日の光景が脳裏に蘇る。
ナオちゃん達によってボロボロにされた私を見て、気まずそうに目を伏せた香月くんのあの目……
また心臓がドクンと大きく脈を打ち、それからバクバクと大きな音を立てる。
イヤ、会いたくない……!
慌てて抱えられた両腕を振りほどこうと、必死にもがいて抵抗した。