第37章 【サイゴノオモイデ】
「先輩、好きな人、いるんですか……?」
「いない……けど……?」
いたらこんなとこ、来ないって……そう答えながら、芽衣子ちゃんの真剣なその目に思わず身体が逃げ腰になると、芽衣子ちゃんはすぐにその距離を詰めてくる。
ありゃ、これってオレ、迫られてる……?
そう内心焦りながら、芽衣子ちゃんの様子を伺うと、芽衣子ちゃんはオレの胸にとんっと額をつけて、先輩……そう小さく呟いた。
「芽衣子ちゃん、もしかしてさっきドリンク、ちょっと飲んじゃった……?」
そんなんじゃないです、そう芽衣子ちゃんは顔を横に振ってそれを否定して、それから今度はぴったりと身体を密着させてくる。
「先輩、私、魅力ないですか……?」
「そ、そんなことないけど……」
そうオレの胸元で切なそうに囁く芽衣子ちゃんに魅力ないはずなんかなくて、ただでさえ見た目はすげータイプなんだから、そりゃ、ヤりたいなーなんて思ったりするし、実際、今だって芽衣子ちゃんの柔らかさに、すっかり身体は反応しちゃってて……
「芽衣子ちゃん、ダメだって!、言ったじゃん?、オレ、学校関係には手ぇ出さない主義なんだって!」
「……でもそれって、先輩が遊んでるのを隠したいからですよね?」
私、知っちゃいましたもん、そう言って上目遣いで見てくる芽衣子ちゃんに、それはそうだけど……なんて目を泳がせて、それから慌ててブンブンと首を横に振る。
いやいや、ダメだって、ここでヤったら小宮山の二の舞じゃん……?
そうさんざん振り回して、結局、酷い捨て方した小宮山の泣き顔を思い出し、慌てて芽衣子ちゃんの両肩を持って引き離す。
「オレ、オレに本気な子ともヤらないことにしてんの!」
だから他の女とはヤっても芽衣子ちゃんとはヤんない、そう真剣な顔で答えて、それから、マジでキツいからさ、もう離れてよ、そう言って苦笑いをした。