第37章 【サイゴノオモイデ】
「ダメじゃん、あんなヤツらのナンパなんかにホイホイついてきたらさ」
そう言いながら部屋に入って鍵をかけると、芽衣子ちゃんが苦しそうにしていることに気が付いて、あ、ごめんね、そう慌てて口から手をはなす。
「オレ、ここで『菊丸』って名字、内緒にしててさ」
苦しかった?そう顔をのぞき込んで首を傾げると、はい、あ、いいえ、そう芽衣子ちゃんは戸惑いながら首を横に振った。
「あんなの飲んだら、芽衣子ちゃん、朝までアイツらの玩具だかんな?」
ほんと、不用心すぎ、そう言ってベッドに腰を下ろす。
ふーっとため息を付いてチラッと芽衣子ちゃんに視線をむけると、芽衣子ちゃんはすごく驚いた様子で顔を蒼くした。
「媚薬、仕込まれてたかんね、ここはそう言う場所」
「そう言うって……じゃあ……」
「そ、オレも同類」
もうこうなったら、隠しておけねーもんな……、そうあきらめ半分でみせたオレの本性に、芽衣子ちゃんは目を見開いた。
「え?だって……先輩、学校では全然……」
「猫かぶってんの、こっちが本当」
桃がさんざん忠告していたじゃん?、そう言ってあざ笑うと、まだ信じられないと言った様子の芽衣子ちゃんが、ソワソワとドアに視線をむける。
「あ、反射的に鍵かけちゃったけどさ、オレ、学校関係の子には手を出さない主義だから安心してよ」
そこ出て真っ直ぐ行った非常口から、誰にも会わず外いけるからさ、そう言って手をヒラヒラさせると、少し考えた芽衣子ちゃんは、座ってもいいですか……?そう言ってオレをじっと見つめてきた。
「へ……?、別にいいけど……?」
「それじゃあ……」
そう芽衣子ちゃんはギシッっとベッドを軋ませながらオレの隣に腰を下ろす。
オレの本性に戸惑っていた様子だったから、すぐに慌てて逃げて行くかな?って思っていたのに、その芽衣子ちゃんの予想外の行動に少し戸惑って、それから、ははっと苦笑いをした。