第37章 【サイゴノオモイデ】
やっぱ、知らんぷりは出来ねーよなぁ……
知らないやつなら、こんなとこに付いて来んのが悪いんじゃん、自業自得ー、なんて思うとこだけど、やっぱ芽衣子ちゃんにそうは言えなくて……
チラッと振り返って視線を向けると、芽衣子ちゃんがちょうど媚薬入りドリンクに口を付けようとしているところで、仕方がないか……そう意を決して女の手を振り払うと、急いで芽衣子ちゃんの元へと駆け寄った。
「はい、ストーーーップ!!」
英二!?、みんながそう驚きみる中、芽衣子ちゃんの手からサッとグラスを奪い取る。
オレのその突然の行動に、ホール内がざわめいて、みんなの視線が集中する。
お、オレってば、まだこんなに素早く動けんじゃん?なんてどうでもいいことを考えながら、コレは飲まない方がいいよん?なんて言って芽衣子ちゃんにウインクする。
「え、な、どうして……?き……」
「わー、タンマタンマ!」
菊丸先輩、そうオレの名字を言いそうになる芽衣子ちゃんの口を慌てて手でふさぐと、そのまま後ろから抱え込み、そのテーブルから距離をとる。
オレの腕の中で何が起きたのか分からない顔をしている芽衣子ちゃんの耳元で、ゴメンね、すぐだからさ、そうコッソリ呟くと芽衣子ちゃんがコクンと小さく頷いた。
「な、なんだよ、英二!」
「悪いけどさ、ちょっと、この娘、オレに譲ってよ?」
「は……?お前、何、言ってんだよ!」
「えー、英二、今日は私とって言ったのにぃ!」
そう納得してない連中に、まあまあ、今度しっかり埋め合わせすっからさ、そう笑顔をむけて、ほい、これあげる、そうオレとヤるはずだった女にドリンクを手渡す。
「今日のところは交換成立と言うことで……」
「えー!なんでそうなるのよー!」
「マジかよー……ったく、英二にはかなわねぇなぁ……」
そう呆れ顔のそいつらに笑顔でもう一度、ごめーんと謝ると、まだよく分かっていなそうな芽衣子ちゃんの口をふさいだまま、奥の通路へと連れ出した。