第37章 【サイゴノオモイデ】
「んじゃ、サッサと行く……?」
オレ、部屋とってくるー……そう言いながら立ち上がると、私も行くーと女が腕に絡みつきながら一緒に付いて来る。
カウンターで金を払って鍵を受け取ると、ちょうど入ってきたやつに、お、英二じゃん?なんて声をかけられて、ほいほーい、なんて返事をする。
「俺らさ、さっきナンパしてすげー可愛い子ゲットしたんだぜー!」
「マジでー?……って、いないじゃん」
「他のやつらと向こうで待たせてる。俺は先にちょっと下準備……♪」
そう言ってそいつがポケットから小さな小瓶を出してニヤリと笑うから、あー……そう言うことね、そう思って苦笑いし、おまえら、あんま無理させんなよなー?なんて言ってカウンターを離れる。
ったく、あいつらも好きだよなー、そう言うプレイ……
ドリンクに小瓶の液体を仕込むその様子を眺めながら、ま、オレも嫌いじゃないけどね、なんて笑ってさらに奥に続くドアへと向かう。
「さ、こっちこっち!」
ちょうどドアをくぐろうと思ったところで、そいつらのそう言う声が聞こえて、すげー可愛いい顔でも拝んでから行きますかーってちょっと立ち止まる。
ちょっと、英二ー?なんて訝しげに見る女を、まぁまぁ、ちょっとだけだって、そう宥めながら見ていると、心細そうに入ってきた女がチラッと見えて、へ……?って顔を固まらせた。
「あの……私、やっぱり……」
「いいからいいから、えっと、何ちゃんだっけ?」
「……芽衣子です」
「そうそう!芽衣子ちゃん!」
やっぱ芽衣子ちゃんじゃん……!
なんでこんなとこ来てんだよ……!?
ここ座ってー、そう案内されてテーブルに座る芽衣子ちゃんに見つからないように、慌てて顔を隠して背を向ける。
やべー、バレる前にさっさと部屋に入んないと……そう思って奥に進もうとするも、これ飲んで飲んで!そうさっき媚薬を仕込んだドリンクを、芽衣子ちゃんに勧めるその声に、ピクッと反応して足を止めた。