第36章 【セイフクデート】
「……アイツ見てると、イライラすんだよね、昔のオレみたいでさ……」
大好きで、ただ愛されたくて、抱きしめてほしくて……
だけどそれは叶わない夢で、いつも顔色伺って、笑顔の奥に不安を隠した。
あの女が不機嫌になる度に、理由なんかわかんなくても必死になって謝った。
ほんと、そっくりじゃん、そう自分にあざ笑うと、また息苦しくなって慌てて胸のボタンを握りしめる。
「小宮山さん、ずっと待ってるよ?」
「……わかってるけど、今はムリ」
顔見たら小宮山泣かせるだけだしさ……、そう呟きなから、オレが散々浴びせた言動に辛そうな顔をする小宮山を思い出す。
「このイライラ、消える日が来るかもわかんないし、もう待たなくていいからって、不二から小宮山に言っといてよ……?」
ついでに、僕が幸せにするからーとかなんとか言ってさ、そうおどけ気味に笑うと、お断りだよ、なんて不二が怖い顔で睨みつけるから、やっぱダメ?そう苦笑いして首をすくめた。
「ちぇー、いい考えだと思ったんだけどなー、弱ってるときに不二に優しく言われたら、流石の小宮山もイチコロかもじゃん?」
「そんなんで僕になびく位なら、もうとっくに英二のことなんか忘れてるよ」
そりゃそうか、そうあざ笑いながらため息をつくと、やっぱ自分で言うしかないか……そう呟いて薄暗くなった空を仰ぐ。
後味悪いから嫌なんだよな……
今、顔を合わせたら、多分、すげー、暴言吐いて捨てちゃいそうだし……
もちろん、今のままじゃ小宮山だって吹っ切れないのはわかってるけど、正直、このまま自然にフェードアウトすんのが一番楽なんだよな……
以前、小宮山にもうやめようって言おうとしたときの事を思い出す。
泣いて拒否するその様子に、決心が鈍ってズルズルとここまで引き延ばし、結局、こんな風になってしまった。
本当、オレ、小宮山振り回してばっかだな、そうため息をついてまた胸のボタンを握りしめた。