第36章 【セイフクデート】
「……先輩、酷いです、私……嬉しかったのに……今日、凄く……嬉しかったのに……」
「……うん、ごめんね……」
オレさ、本当、酷いやつだからさ、やめた方いいんだって、そう自分にあざ笑いながら呟くと、ちょうどホームに電車が到着し、乗車客の人波がオレ達の周りを流れていく。
プルルルルルー
発車ベルが鳴り、もう行くから、そうポツリと呟くと、オレの学ランを掴む芽衣子ちゃんの手が力なく離されたのを確認し、そのまま何も言わずドアが閉まる直前の電車に乗り込んだ。
こんなに後味悪い振り方、初めてだな……なんて思って、いや、初めてじゃないか、そう小宮山の泣きそうな顔を思いだして目を伏せる。
小宮山だって、すげー、後味悪いままじゃん……
何も悪くない小宮山にあんな酷いこと言って、利用するだけ利用して、最後は突き放して……
そう思って痛む胸にチッと舌打ちをすると、ドアにもたれ掛かり、本当、オレ、何やってんだろ、そう足元を見つめながら深いため息をついた。
ま、いいや、どうせ夏休みだし、一ヶ月半もありゃ、全部忘れるって……
小宮山も芽衣子ちゃんも、オレのことなんか忘れてまた他にいい男見つけるって……
そんで、オレはなんも変わらず、適当なセフレと遊んで、そんで適当に生きてくだけ……
ほんと、気楽な人生だよな……
光丘の駅に着くと夕焼けに染まる空を見上げる。
その寂しげな夕焼け空にまた息苦しさを感じ、胸のボタンをギュッと握りしめた。