第36章 【セイフクデート】
「ほんとにこんなとこで良かったの?」
行きつけのハンバーガーショップでハンバーガーをパクつきながら問いかけると、はい、私もよく友達ときますよー、そう言って芽衣子ちゃんはポテトを摘まむ。
小宮山はこんなとこ来ないだろうな……なんて思って、それから、あの後、不二と小宮山、どうしたかな、なんてオレが気にする資格すらないことを考える。
腹を満たした後はブラブラとショッピングしたり、ゲーセンに寄ってクレーンゲームでぬいぐるみをとってプレゼントしたり、くっついてプリクラとったりして、最後は駅前のカラオケ屋で2人並んで座る。
「菊丸先輩って歌声も可愛いですよね♪」
「そうかにゃ?」
さりげなくオレの太ももに手を添えながらそっと寄り添ってくる芽衣子ちゃんに笑顔をむけると、小宮山は絶対自分からオレに触れてこなかったな……なんてまた小宮山の事を考える。
つーか、なんでオレ、こんなに小宮山のことばっか気にしてんだよ、そうまたさっき自分が傷つけた小宮山の顔を思い出して自分自身にイライラした。
「菊丸先輩、前から思ってたんですけど、このボタン……どうしたんですか?」
私がちゃんと付け直しましょうか……?そう芽衣子ちゃんがオレに寄り添いながら小宮山がつけた胸のボタンに触れるから、さり気なく芽衣子ちゃんの身体を離して笑顔を作る。
「そんなことよりさ、芽衣子ちゃん、次なに歌うー?」
「え……?そうですね、それじゃあ……」
戸惑う芽衣子ちゃんに笑ってごまかしながら、だいたい、オレ、なんでこの下手くそなボタン、付け替えないんだろ……?なんて自分で疑問に思った。
小宮山……不二にちゃんと笑わせてもらったかな……
目の前の芽衣子ちゃんと普通に色々喋ってんだけど、その会話の内容なんてぜんぜん頭に入ってこなくて、気がつけば小宮山の泣きそうな顔ばかり思い出して、そんな泣き顔を追い払うため躍起になって笑顔を作った。