第35章 【ナツヤスミマデ】
「うん、それは多分……大丈夫だと思うけど……でも、あのね……男の子なんだ……」
そうドキドキしながらお母さんの様子を伺うと、本当に友達……?彼氏じゃないの……?そう言ってもう一度お母さんは目を見開いた。
うん、友達、いろいろ助けてもらってる……そう少し目を伏せて言う私に、そう、良かったわね……そう言ってお母さんは夕食作りの手を再開した。
「それでね?学校じゃ、不二くんと私が付き合ってるって噂になってるんだ……」
「あらあら、じゃあちょっと大変なんじゃない……?そんなに人気のある男の子なら」
「うん……でも不二くんとそのお友達がビシッと言ってくれたらすぐにおさまったの」
夕飯を食べながら母に不二くんとのことを話す。
普段、学校のことを殆ど話さない私の話を、お母さんはどんな気持ちで聞いているのかな……
小さい頃から学校のことで話せることが少なくて、もちろん図書室で読んだ本の話題とか、何の委員会になったとか、そう言う話は時々するけれど、友達の話は出来ることが全然なかった。
やっと中学の時にナオちゃんの話が出来るようになって、お母さんはその時すごく喜んでいたから、あんなことになっちゃって私とはまた違ったショックを受けていた。
もちろん、そんなそぶりは全然見せなかったけど、私に見つからないようにこっそり泣いているのを見て、本当にごめんね……って思った。
だから、もう友達なんか作らないって決めていたけど、それでも不二くんと友達になれて、お母さんがまた友達が出来たって知ったらホッとするかなって思って、男の子だからなんて言われるかちょっとドキドキだったけど、思い切って打ち明けてみた。
「……あとね……女の子でね、優しくしてくれる子がいるんだけどね……どう接したらいいかわからなくて、拒否しちゃったんだ……」
そうポツリと呟くように吐き出すと、そうなの……そうお母さんも小さく呟いた。