第35章 【ナツヤスミマデ】
「小宮山さんでも順位表を確認したりするんだね……?」
ちょっと意外だな……なんて不二くんが掲示板に視線を向けながらそう呟く。
「別にいつもってわけじゃないですけど……今回は調子が悪かったので、少しホッとしていたところです」
チラッと周りの生徒達が私達を見て、お、首席と次席だって呟いて通り過ぎていく。
最近は2人でいても周りからあまりなにも言われなくなっていた。
もしかしたら自分も慣れて、気にならなくなったのかも知れないけれど。
「調子が悪いキミにも勝てないのか、さすがだな」
「いえ、不二くんは部活もしてますから、同じ条件ならわかりませんよ?」
実際、不二くんは部長として部をまとめながら、生徒会の仕事までしているんだから、クラス委員をしているとは言え、帰宅部の私よりずっと勉強をする時間なんかとれてない。
「いえ、多分あっさり抜かれちゃう気がします」
「そんなことはないと思うけど……?」
そんな話をしながら廊下を歩いて教室まで戻る途中、中庭をぼんやりと歩く英二くんを見つけた。
どこにいてもあっという間に英二くんを見つけてしまうんだから、これって私の特技なのかも……なんて思ってため息をつく。
英二くん……思わず立ち止まって切ない胸をそっと抑える。
長い「待て」だなぁ……ポツリと呟いてポケットの携帯をそっと撫でた。
すると、菊丸せんぱーい!と可愛い声を上げて鳴海さんが英二くんに駆け寄ってきて、2人は体育祭の時のように仲良さそうに話をし始めた。
最近、鳴海さんと英二くん、よく一緒にいるな……
その変な特技ゆえ、見たくもない2人の様子を時々見てしまい、その度に胸がギュッと締め付けられた。
相変わらず可愛い笑顔で英二くんの腕に手を添える鳴海さんと、楽しそうに笑顔を返す英二くんのその様子に、この光景もだいぶ見慣れたな……なんて思いながらそっと目を伏せた。