第35章 【ナツヤスミマデ】
「相変わらず首席は小宮山璃音かー」
「あ、不二くん今回2位だよ!本当、頭脳明晰、容姿端麗のカップルだよね」
期末試験が終わり、数日たつと成績上位者の名前が廊下に張り出される。
登校して教室にむかう途中の掲示板には人ごみが出来ていて、みんなそんなことを口々に噂している。
チラッと視線だけ向けたそこには小宮山を筆頭に、不二や乾の名前も当然のっていた。
あれから小宮山とは一切関わりがなくなっていた。
まぁ、それはオレに連絡する気が全くなくなったからなんだけど……
小宮山、少しは成績下がるかなー?なんて思ったけど、あいつに限ってんなわけねーか……
ほーんと、可愛げのねーやつ……ま、もうどうでもいいけどね、なんて思って嘲笑う。
「みんな、おっはよー!」
いつものように元気に挨拶しながら教室に入ると、自分の席で本を読む小宮山には目も暮れず、そのままその前を素通りする。
あれ以来、建て前でも欠かさなかった挨拶すらしなくなっていた。
そのたびに泣きそうな顔を必死に隠す小宮山に、ちっとも隠せてないよ、なんて思って、やっぱこうなると面倒だから学校のやつなんかセフレにするもんじゃないな、そうため息をついて首をすくめた。
「廊下の掲示板を見てみんなもう知っているだろうが、今回もトップは小宮山だ」
よく頑張ったな、そう成績表が担任から返されると、ありがとうございます、そう相変わらずツンツンした小宮山がそれを受け取る。
「菊丸、今回は頑張ったじゃないか!」
そう珍しく誉められながら渡された成績表を覗き込み、ほっと胸をなで下ろす。
自分の席に座ると周りの友達に、ブイサインをしてニイッと笑う。
「おっ、小遣いと携帯、無事だったのかよ?」
「まーねー、オレってばやれば出来る子だから♪」
今回は小宮山がくれたノートのおかげで、苦手な英語もなんとか赤点をとらずに済んだ。
だけどそれで小宮山に感謝する気持ちなんてサラサラ起きなかった。