第34章 【タイイクサイニテ】
「みんな打ち上げ行こうぜー!」
「駅前のカラオケ屋の前に6時集合ねー!」
体育祭の後片付けも終わると、そんな風にみんなが盛り上がりながら帰って行く。
英二くんはそんな和の中心にいて、英二、来るでしょ?ってみんなに聞かれていて、もちろん、いっくよーん♪なんて笑顔で答えている。
当然だけど私にはそんなこと関係なくて、実行委員としてやらなければならない後片付けを、いいですよ、私やっておきます、そう他のクラスの分も一手に引き受ける。
倉庫の棚に備品をしまいながら、ここでも英二くんに求めてもらったな……なんて考えるとまた切なくなる。
「あ、いたいた、小宮山さん!」
急に倉庫の入り口から声をかけられて思わず一瞬だけ動きを止める。
……何か用ですか?市川さん、そうすぐに作業を再開して視線も向けずに答える。
「打ち上げ、小宮山さんも行こうよ?」
「遠慮しておきます」
間髪入れずにそう返事をすると、即答!?そう市川さんは苦笑いをした。
そもそも、行くはずないじゃない……そう思いながら作業を続けると、なんで?小宮山さん、実行委員で頑張ってくれたんだし行こうよ?そう市川さんは食い下がる。
「……あの、市川さんには凄く感謝しています」
いろいろ気にかけていただいて、本当にありがとうございます、そう言って手を止めると、市川さんの目をまっすぐに見る。
急にそう言いだした私に、市川さんはちょっと戸惑った顔をして、うん?そう疑問系の相槌を打つ。
「……ですが、私のことは放っといてもらえますか?正直、迷惑です」
最後の道具を棚にしまうと、鍵、閉めますから、そう言って彼女を外に促して、失礼しますと頭を下げて背を向ける。
職員室に鍵を返しに向かいながらため息を落とす。
流石にもう話しかけられることもないかな……なんて思うと胸が苦しくなる。
本当にごめんなさい、でもやっぱり怖いの……
もうナオちゃんの時のような思いは二度としたくないから……
色々な感情に身体が震え、ギュッと自分を抱きしめると、耐えきれずに暫くその場にうずくまった。