第34章 【タイイクサイニテ】
「……そう言えば、海堂、不二先輩の彼女は?」
そう思い出したように言う桃の一言に、不二の彼女?そう思わず顔がピクッと反応する。
小宮山先輩だろ、そう桃に釘をさす海堂と目があって慌てて視線を逸らす。
なに?小宮山さんいたの?そう平静を装って笑顔を作ると、倉庫まで荷物を運ぶのを手伝ったところっすよ、そう桃が笑顔で言って、テメェはなんもしてねーだろ、そう海堂が桃を睨みつける。
「小宮山先輩は委員の仕事があると言って戻って行きましたよ」
そう何故かオレを見て言う海堂に、ふーん……そう何でもないように答えると、そんじゃ、オレ、もう行くねんって笑顔を作って、芽衣子ちゃんまたねー、そう手を振って背を向ける。
「あの、菊丸先輩!」
そう呼び止める芽衣子ちゃんに、んー?ってもう一度笑顔を向けると、あ、あの……そう言葉を選んでいるうちに、鳴海、だから目を覚ませ!なんて桃のやつがまた口を挟む。
「……すみません、桃城くんのいないときにします」
そう芽衣子ちゃんはため息をついてポツリと呟いたから、そっか、じゃ、また今度ね、なんて言って笑顔で手を振ると後頭部で腕を組んで歩き出す。
「もう、桃城くんなんか大嫌い!!」
後ろからそんな芽衣子ちゃんの声が聞こえチラッと視線を向けると、そりゃねーな、そりゃねーよ……そう肩を落として落ち込む桃に、あっちゃー……なんて苦笑いをする。
それから、相変わらずオレを真っ直ぐに見ている海堂と目があって、なんなんだよ、そう思って目を伏せた。
それにしても、芽衣子ちゃんのあの感じ……
もっかい告るつもりかなー……なんて思って、また振んのはちと憂鬱だなって立ち止まって青空を眺める。
もしオレがこんなんじゃなきゃ、普通に芽衣子ちゃんからの告白オッケーして、普通に付き合ったりすんのかな……?
ま、普通じゃないから無理だけどね、そう嘲笑って視線を足元に落とすと、それからふーっとため息をついた。