第34章 【タイイクサイニテ】
「英二ー!」
「菊丸せんぱーい!」
英二くんが競技にでると、アチコチから黄色い歓声が上がる。
やっぱり凄い人気だな……なんて思いながら英二くんの活躍を眺める。
まあ、それを言ったら不二くんへの声援はもっと凄いんだけど。
英二くんはどの競技も凄く楽しそうで、やっぱり身体を動かしているときの英二くんは凄く幸せそうで、目をキラキラ輝かせて、光る汗も凄く輝いていて、それは快晴の青空に全然負けていなくて、キュッと胸が高鳴った。
次の仕事まで手が空いて暫しの休憩時間。
英二くんの笑顔を思い出してため息をついては空を仰ぐ。
「小宮山さん、コレ、菊丸くんと倉庫まで片づけてくれない?」
他の委員に頼まれて使い終わった道具が入っているダンボールを倉庫まで運ぶ。
結構重いな……一度持ち上げてすぐにおろし、よしっ!と気合いを入れてまた持ち上げる。
英二くんと一緒に……って、頼めるはずないもんね……
重い……しかもよく前が見えない……
気合いを入れれば大丈夫かと思ったけれど、やっぱり重くてフラフラになりながら倉庫に向かう。
「あ、すみません……!」
人混みの中をダンボールを抱えながら歩くと、前がよく見えないせいで誰かにぶつかってしまい、慌てて謝ると急に手元が軽くなる。
え?って思って顔を上げると、ぶつかってしまった男子生徒が私の持っていたダンボールをひょいっと持ち上げてくれていた。
……あれ?この人……どこかで……?
ギロッとした目つきで私を見下ろしているその彼は、その見た目とは裏腹に、どちらに運ぶんですか?そう丁寧な口調で私に問いかける。
「あ、あの……?」
運んでくれるのかな?でもどうして……?そう首を傾げて彼を見上げると、そんな彼も私のその様子に戸惑った顔を見せた。
「お前がんな顔してっから、不二先輩の彼女が怖がってんじゃねーか」
今度は後ろからそう聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、そこには桃城くんが立っていて、そんな桃城くんに荷物を持ってくれた男子は目つきをますます鋭くして、ああ?と低い声を上げた。