第34章 【タイイクサイニテ】
パンッ、パンッ!
体育祭当日は見事なほどの快晴で、青い空によく映える2つの白い煙に目を細める。
クラスのみんなに赤い鉢巻きを渡しながら、こっそり英二くんに視線を向ける。
「赤、赤!うちのクラスの鉢巻きはぜーったい赤で決まりだかんね!」
クラスの鉢巻きの色を決めるとき、ハイハイ!と英二くんが身を乗り出して、赤に決まったときのことを思い出す。
小宮山さんも赤がいいよな?って同意をもとられたとき、私は白の方がいいですって答えたら、なんでさ?って英二くんは頬を膨らませた。
赤は似合わないので……って言ったら、大丈夫だって小宮山さん、赤もぜったい似合うから♪ってウインクされて、みんなの前だから赤くなる顔を隠すのに必死になった。
鉢巻きを絞めて手鏡で確認してみても、やっぱり赤なんて似合ってなくて、英二くんの嘘つき、そっと呟いてため息を落とした。
実行委員は当日もなんだかんだと忙しく、競技に出てない時間はバタバタと走り回る。
次の競技の準備をしたり、競技のサポートをしたり……
英二くんは沢山競技に出るからそうでもないけれど、玉入れだけの私は特に忙しい。
今となってはその玉入れさえもでる意味がない気がしてならないけど……
赤い玉をかごに放り投げながら、何でこんなことしているんだろう……?
一応競技には参加したけれど、そう疑問に思わずにはいられなかった。
見事に私の投げた玉は一個も籠に入らず、本当に意味がないまま競技は終わった。