第33章 【オイテケボリ】
「あ、ほら、あの2人、一緒にいるよ?」
「本当だー、あー、不二くん、ショック~……」
「はあ~、小宮山さんのキスマークの相手って不二くんだったんだね……」
ああ、そうか、この英二くんのしるし、不二くんがつけたって思われるのか……
考えたら当たり前なんだけど、言われるまでそれに気がつかなくて、本当に申し訳なくて、苦笑いしている彼に、ごめんなさい……そう小さく謝って目を伏せる。
それから昨日の電話で、不二くんに好きな人がいるのかな?って思ったことを思い出して、だったらその人に誤解されたら困るんじゃないかな?って凄く心配になった。
「あの……不二くん、私、自分の事しか考えてなくて……ちゃんと否定しますね」
そうグッと拳を握って決意をする私に、不思議そうな顔をした不二くんは、どうしたの?急に、そう言ってクスクス笑う。
「だって、不二くん、好きな人に誤解されちゃうじゃないですか……」
そんな私の言葉に、好きな人って……?そう驚いた顔をするから、いるんですよね……?好きな人……そう首を傾げる。
「どうしてそんな風に思うの……?」
「昨日、電話でなんとなく……あと公園でも……」
僕はたった一人の王子様でありたいと願うよ、そう呟いた不二くんの声をもう一度思い出す。
そう思うと公園で英二くんを羨ましいって言ったことも、多分、そんな風に好きな人に想われたいって事なんだろうな、なんて妙に納得してしまう。
私に少しでも人望や人脈があったら、不二くんの恋の協力が出来たかもしれないけれど、残念ながらその辺は全く無縁に生きていて、私に出来ることと言ったらキッパリ噂を否定することくらいで……
だいたい、彼氏とじゃなくてもそう言うことしているのは本当のことだし、不二くんに迷惑かけるわけにいかないもの……
グッと拳を握って心を決めて、うんと大きく頷いた。