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【テニプリ】闇菊【R18】

第33章 【オイテケボリ】




「……すみません、あの……遅くなりました……」


なんとか気持ちを落ち着かせ涙を止めると、教室のドアを静かに開ける。
あぁ、小宮山、ご苦労だったな、なんてチラッと私をみた先生がそう声をかける。


英二くんが立ち去ってから、もうだいぶ時間が経っていて、今まで何してたんだ!って怒られるのを覚悟していたから、その反応に少し戸惑ってしまう。


「小宮山さんごめんねー、オレのこと探しに来てくれたんだって?」


今まで学校中探し回ってたの?そう教室の反対側から明るい声を上げる英二くんの無邪気な笑顔にズキンとまた胸が痛みだす。


大好きな英二くんに笑顔をむけられても、本当の笑顔じゃなければそれは辛いだけ……


でも一応、フォローはしてくれるんだ……そう思うとホッとしてしまって、私って本当バカだなって、内心、自分を嘲笑う。


英二くんは私のためにフォローしてくれたんじゃなくて、先生の言い付けですら私と会ったことを知られたくないだけなのに……


それにしても、英二くんは昨日ご自宅にお邪魔したときもそうだったけど、本当に気持ちを切り替えるのが上手で、それは不自然すぎるくらい自然に切り替えてて、それほど自分を偽りながら生活するのが当たり前になっているのかな……?


私も自然に出来なきゃますます嫌われてしまう、そう思いながら、いえ、そう一言だけ言って席に着く。


私はこんなんだから無理に笑わなくて済むけれど、英二くんは笑いたくないのに笑っているのだとしたら、それは凄く苦しいだろうな……そっと俯いて拳をギュッと握りしめる。


英二くんが無理に笑わないで済むようになればいいのに、なんて思ってふーっと大きく息をつくと、顔を上げて背筋を伸ばし、いつものように授業に集中した。

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