第33章 【オイテケボリ】
「うぜー……小宮山は、黙ってオレに呼び出されんの待ってりゃいいんだよ……」
私の謝罪にボソッと呟いた英二くんのそのセリフに、既に張り裂けそうに痛んでいた胸が本当に張り裂けてしまったのかと思うほどの衝撃が襲う。
泣いたらまた怒られると思って必死に我慢していた涙が、その一言で一気にあふれ出し、その場に膝を抱えてしゃがみこんだ。
どうしたら許して貰えるのか分からなくて、私に出来ることといったら謝ることしかなくて、けれど余計に怒らせてしまった気がしてならない。
目を覚ました英二くんにキスして貰えると思ったら凄く嬉しくて、幸せな気持ちで目を閉じたら突然押し戻された。
え?って、どうして?って、英二くんを見たら、目があった彼はとても怖い顔をしていて、ああ、寝ぼけてただけなんだって、やっぱり許して貰えてないんだって、凄く悲しくて苦しかった。
どうしたら許して貰えるんだろう……?
どうしたら笑顔を向けて貰えるんだろう……?
どうしたら優しくして貰えるんだろう……?
そんな風に次から次と沸き起こる「どうしたら?」を、遠ざかる英二くんの足音を聞きながら何度も繰り返した。
ダメ、英二くんを呼びに来たんだから、一緒にいかなくちゃダメなのに、頭では分かっているのに、身体が言うことを聞かない……
必死に涙を拭って立ち上がるも、なかなか涙がとまらなくて、何度も深呼吸を繰り返す。
フラフラと歩き出すと踊場の窓に映る自分の顔に、酷い顔……そう苦笑いをしてまた涙を流す。
前に終わりを告げられそうになったときとは違う不安が心を支配する。
あの時は英二くん、私のことを思って終わりを切り出そうとした。
でも今は、完全に私のことを不快に感じているとしか思えない。
不二くん、本当に英二くん、私に気を許しているの……?
教室に戻る前にトイレで顔を洗い、涙をこらえて大きく息を吸う。
私、本当、こんなんばっかだし、そりゃウザくもなるよね……そう鏡の中の自分を見てため息をついた。