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【テニプリ】闇菊【R18】

第33章 【オイテケボリ】




「……英二くん……」


遠くで聞こえるオレを呼ぶ声……
心地よい……とても身近な……


かーちゃん……?ねーちゃん達……?
違う……もっと優しい声……


……小宮山……?


ああ、そうだ……
このフローラル系の甘い香り……
オレの髪を撫でてる……
すげー……キモチイイ……


夢……?
そうだ、オレ、屋上に来て寝ちゃったんだ……
んじゃ、もうちょっと寝る……


「英二くん、起きて下さい」


んー……?
そっと目を開けると、ぼんやりと小宮山の顔が見えた。
不安そうなその顔に、なんでそんな顔してんだよ?そう思ってそっと手を伸ばす。
オレの指が頬に触れる瞬間、小宮山はピクッと小さく身体を震わせた。


良い香りのするキレイな髪を撫でると、今度は嬉しそうに笑ったから、キスしたくなって身体を起こす。
そっと引き寄せると、小宮山はすげー幸せそうな顔をして瞳を閉じた。


小宮山……なんでそんなにオレなんか好きなのかな……?
なんでそんなに、幸せそうに笑うのかな……?


小宮山……って、小宮山!?


唇が触れる直前、我に返って慌てて小宮山の身体を押し返す。
小宮山が目を見開いてオレを見て、それから悲しそうに目を伏せる。


「……何?」


昨日と同じくらい冷たい声が口から出て、イライラが一気に心を支配する。
悲しそうな顔をする小宮山を思わず睨みつける。


「……授業、始まってます……先生が探して来いって……」


ああ、そう言うことね……ふーっとため息をつくと、小宮山は小さい声で、ごめんなさいと謝るから、何も悪いことしてねーじゃん、そう思って舌打ちする。


「学級委員もオレみたいなのがクラスにいると大変だね」


そう言って小宮山の滲む涙に気がつかない振りをして、よっとそこから飛び降りる。
重いドアをひいて手をヒラヒラさせると、そのまま屋上を後にした。

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