第33章 【オイテケボリ】
「え、英二くん……?」
ハシゴから恐る恐る声をかける。
まさかまた具合悪くなったんじゃないよね……?
昨日の今日だけに不安になってしまい、身を乗り出してその肩を二度、三度と揺らす。
「……ふにゃ……」
すると英二くんは寝返りを打って身体のむきを変えたから、良かった……寝てるだけみたい……、そうホッと胸をなで下ろす。
同時に、ふにゃって、まるでネコ丸みたい!なんて、その可愛さにキュンとして、にやける口元を慌てて手の平で隠す。
そういえば英二くんの寝顔って始めてみたな……
授業中はよく寝てるみたいで先生に怒られているけど、私の席からは見えないし……
正確には今も授業中なんだけど……そう思いながら、規則的な寝息をたてて幸せそうに眠る英二くんに頬を緩ませる。
ずっとこのまま眺めていられたら幸せなのにな……静かにハシゴを登り切ると、英二くんの隣に座って風に揺れるその外ハネの髪をそっと撫でる。
でもそう言う訳にはいかないよね……
英二くん!起きてください、そう先程より強めに揺らすと、んー……と目をこすりながら英二くんはゆっくりと目を開けた。
「……小宮山……?」
「英二くん、授業、始まってますよ……?」
怒られないかな……?そう不安で少し身構えて、先生が呼んでます、そう声をかけると、私の名前を呼んだ英二くんは、ぼーっとした顔のまま、そっと私の頬に手を伸ばした。
心臓がドキンと高鳴って、それからドキドキと早い鼓動を打ち始める。
大丈夫……?怒られない……?そんな不安と、英二くんに触れて貰える期待とが入り混じって、ギュッと胸を震える拳でおさえる。
英二くんの指が私の頬に触れた瞬間、ピクッと小さく身体が跳ねる。
それから彼の手が私の髪に触れて優しく撫でられる。
あ……良かった、怒られないみたい……安心したのと同時に嬉しくて涙がにじむ。
身体を半分起こして身を乗り出した英二くんが、私の後頭部を引き寄せるから、あ、キスして貰えるんだ……そう幸せを感じてそっと英二くんに身を任せた。