第33章 【オイテケボリ】
「菊丸はどうした?休みか?」
英二くんは朝のHRの時間になっても戻ってこなくて、そのまま一時間目が始まってしまい、教科担任の先生がそうみんなに問いかける。
朝は来てたよー、そう誰かが答え、電話してみろ、そう先生が声をかける。
「先生、出ないよー。どっかで寝てんじゃね?」
「全く、アイツは仕方がないな、期末も近いというのに……」
そう言って先生は呆れた顔で出席簿を手に取ると、学級委員は……小宮山だったな、ちょっとその辺探してきてくれ、そう私に向かって声をかけた。
思わず顔を固まらせて、え……?そう声を上げそうになり、慌てて口を結ぶ。
日頃の私なら、淡々としつつ、内心、大喜びで探しに行くだろうけれど……今の私は英二くんと顔をあわせづらい……
だからと言って、断ったら不自然すぎるもんね……ふーっとため息をついて目を伏せると、分かりました、そう言って立ち上がった。
英二くんの行きそうなところの心当たりなんて一カ所しかなくて、心当たりなんて言うより、もうその場所にいると確信していて、まっすぐにそこにむかって歩みを進める。
英二くん、私がいったら怒るかな……?
でも先生に言われたんだから仕方がないよね……?
不安な気持ちを誤魔化すように、大丈夫、大丈夫、そう自分に言い聞かせながら、重い足取りで階段を登る。
ギギーッと思い扉を開けると、眩しくて目を細める。
そっと空を仰いで全身に風を浴びる。
……気持ちいいな……
すうっと息を吸って空を見上げると、飛び立つ鳥が一生懸命、羽を動かして青空に散っていった。
振り返ってさらに上を見上げる。
菊丸くん……いますか……?他の人が上っている可能性も考えて、念の為名字で呼びかける。
あれ……?予想、外れちゃった……?
反応がなくて首を傾げながら、ドアの横のハシゴを登ってそっと覗く。
やっぱりいた……案の定、そこには英二くんが横になっていた。