第6章 【ヒョウヘン】
「いやっ……や……めっ!」
声にならない声でそう叫ぶ。
その一瞬の隙間を見逃さずに彼の舌が私の口内に侵入してくる。
「……んっ……はっ……ぁ……」
口の中が彼の舌でいっぱいになる。
初めて感じたそのぬるっとした熱い感触に顔を歪める。
無理矢理絡ませてくる彼の舌から逃れようと必死に顔を背けるけれど、そんな抵抗もむなしくすぐに捕まってしまって……
私の口内を犯す彼は息をする暇も与えてくれなくて、苦しくて苦しくて、もう駄目って思う頃になるとそっと息継ぎを許してくれる。
「んはっ……ん……はぁ……!」
何度も何度も角度を変えて繰り返されるそれに、どんどん意識が遠のいて、だんだん抵抗すらできなくなってくる。
菊丸くん、どうしてこんなことするの……?
私にこんなことして何の得になるというの……?
ほっといてよ、構わないでよ。
菊丸くんにはあの時の彼女がいるじゃない……!
彼にキスされながら、自分を見失わないように必死に頭の中で考える。
そうしていないと、理性を全て持って行かれてしまうから……
それ程菊丸くんのキスは気持ちのよいもので、私の口内はおろか脳内までも刺激して、その全てを受け入れてしまいそうになる。
現に私はそのキスに抵抗することも忘れ、彼のその次の動きに期待すらし始めていた。