第6章 【ヒョウヘン】
最初の無理矢理、食べるようにしてきたキスは、いつの間にかゆっくりと私の口内を優しく愛撫するものへと変わっていた。
チュッチュッと音を立てながら何度も角度を変えて繰り返される短いキス。
下唇を甘噛みされるとゾクゾクして、思わずあっと声が漏れる。
それを合図にしたかのように、菊丸くんはもう一度、ねっとりとした舌を滑り込ませてくると、それは歯列をなぞって隙間をこじ開け、それからゆっくりと私の舌と絡ませてくる。
駄目……気持ちいい、なんて……思っちゃ……駄目ぇ……!
そんな風に頭の中で最後の抵抗を試みたけれど、その抵抗もむなしく、すっかり私の思考回路は麻痺してしまっていた。
「はは、すんげー、エロい顔」
気がつくと菊丸くんは私を見下ろしていて、そうニヤリと笑った。
や、やだっ、私ったらなにぼーっとしてんの!!
我に返って慌てて彼から顔を背けると、露わになった首もとに今度はチリッとした熱い痛みを感じた。
「な、なに……?」
「んー……ちょっとしるし、つけただけ」
しるし……?……それって……まさか……!!
慌ててそこを手で押さえようとしたけれど、私の手はまだ彼に拘束されたままで、彼はそんな私を拘束する手を、両手から片手に持ち替える。
それからあいた右手でその付けたばかりの『しるし』をそっと指でなぞると、満足げに微笑んだ。
そんな彼の行動とその表情に身体がカアッと熱くなる。
そして彼と目があうと、彼はニヤッと笑って私の制服のリボンに手をかけた。
菊丸くんは私の制服のリボンをスルッと解いて、器用に私の頭の上でその両手を縛りあげる。
な、にするの……?、そう驚く私に菊丸くんは、だってこっから先は両手、使いたいじゃん?そう言って笑った。