第32章 【ゲキタイ】
靴を履き替え周りを見回すと、靴箱の影から不二と乾、タカさんが顔を出して、遅いよ、英二、そう軽くにらみつけられる。
ごめーん、そう謝りながら近寄って、乾とタカさんは何でさ?って聞くと、乾は筆跡鑑定人、タカさんは犯人が逃げ出したら取り押さえる役だよ、そう不二は開眼して笑い、その横で乾はメガネをクイッとあげて、頑張るよ、そうタカさんは頭をかいた。
「で、オレはー?」
「英二は彼女達のノートを机から出してくる役」
あー……確かに犯人はあいつらしかいないし、同じクラスのオレじゃなきゃ、正確な机の位置しらないか……
にゃるほどね、そう納得するとみんなと一緒に小宮山と少し距離をとって歩く。
「んで、不二が脅す役ね」
「僕は説得する役だよ」
人聞き悪いなぁ……そうクスクス笑う不二も渦中の人だから、そんな不二と一緒に歩くオレらも注目浴びてんだけど、みんなある程度、視線には慣れているから、特に何とも思わずそのまま進む。
「でも不二だって犯人の目星ついてんなら、もっと早くきて現行犯で捕まえれば良かったじゃん?」
そうチラッと振り返り、後ろを歩く不二に言うと、ダメだよ、それだと見せしめにならないからね、そう言って不二はフフッと笑う。
出来るだけ多く人の前で言い逃れのできない証拠を突きつけてあげないとね、そう言って楽しそうに笑う不二に、やっぱ脅す役じゃん?そう思って首をすくめた。
小宮山は相変わらず堂々としてて、不二の彼女、凄いなぁ……そう事情を知らないタカさんが呟くと、彼女じゃないよ、そう不二が否定する。
ええ!?って驚くタカさんに、彼女のプライバシーに触れるから詳しくは言えないが、不二の彼女ではない、そう乾がもう一度それ否定する。
「そうなんだ……英二は何か知ってるかい?」
「……さー……?」
不二と乾からの無言の圧力にまた首をすくめると、そんなオレらの様子に何かを感じ取ったのか、まさか……いや、そんなはずないよな……、そうタカさんが独り言を呟いた。