第32章 【ゲキタイ】
「証拠ならここにあるよん!」
教室の端から突然そんな英二くんの声がして、慌ててみんながそちらを振り返る。
英二くん……?そう顔を上げて目を見開くと、彼は数冊のノートを持っていて、それを一冊ずつこちらに向かって放り投げる。
飛んできたノートは、いつの間にか私の側に立っていた不二くんと乾くん、河村くんがそれぞれ受け止めて、ナイスキャッチ♪そう英二くんがニイッと笑う。
英二くん……どうして……?
思わず彼の方に視線をむけてしまうと英二くんと目が合って、次の瞬間、彼の顔つきが厳しいものへと変わる。
そのまますぐに視線をそらされたから、やっぱりまだ怒ってるんだ……そうズキンと胸が痛んだ。
「え?なに?」
「あ、ちょっと、それ……」
「私達のノート!?」
そう慌てる彼女達をよそに、それぞれ彼らはノートを開いて机や上靴の落書きと見比べると、乾、どう?そう言って不二くんが乾くんに問いかける。
「うむ、マジックとシャープペンシルの違いはあるが、筆順、点画の構成、文字の形態、筆勢、筆圧、誤字誤用、個人内変動……以上の点から判断して、この机と上靴の落書きが彼女達によって書かれた確率は……99、7パーセント!」
そう言って乾くんはクイッとメガネを中指で上げると、決まりだね、そう言って不二くんは彼女達を見る。
あの……?そう不二くんの顔を見上げて言うと、小宮山さんは僕達が守よって言ったよね?そう言って優しい笑顔をむける。
さりげなく「僕が」を「僕達が」に言い換えた不二くんの気遣いに、思わず笑顔を返しそうになり、慌てて俯いてそれを隠すと、ありがとうございます、そう呟く。
「小宮山さんは僕達の大切な友人なんだ」
そう不二くんのいつもより低い声に慌てて顔を上げると、彼は凄く怖い顔つきで彼女達を見ていて、そんな彼女達は恐怖に顔を歪めて俯いた。
「僕は大切な友人を傷つける人を絶対許さない」
そう言って今度は小林くん達に視線を移動させると彼らは慌てて視線を逸らす。
不二、怒るとすんげー怖いよん?そう言って英二くんはブルブルふるえる真似をした。